さて、長い時間さまざまな準備を済ませて、やっと開店にこぎつけました。
今回は営業中のオペレーションになります。
オペレーションとはこの場合「業務をスムーズに進めるための体制や手順」のことを言います。
あなたひとりのお店ですから当然「ワン・オペレーション」ですよね。
昨今「ワンオペ」は、チェーンの牛丼店などの業務形態を責めるような文脈で使われていますが、個人経営のお店ですから前向きなワンオペです。
どうやって効率よくワンオペ営業できるのか。
飲食店の経験がない方はもちろん、ひととおり経験ある方も目を通してみてください。
基本の流れ
まずは一通りの流れを記しました。
これらは基本中の基本ですが、これを流れるようにこなせるようになると、グッと仕事が楽になります。
また、お客様の印象が決まりやすい点ですので、忙しいときでも、いい加減にしないようにしましょう。
また「料理がメインのお店」であれば、お水やおしぼりは省略可能です。
セルフで、つまりお客様自身に持ってきてもらうスタイルもできます。
自分の作業量を考えて、無理のないオペレーションを作りましょう。
効果的な「いらっしゃいませ」
お客様が入ってきたら、何をおいても「いらっしゃいませ」です。
基本中の基本ですが、ごくまれにこれができないお店があるんですよね。
個人営業のお店が多いです。
ほかの作業やお客様とのトークに夢中になっていた、などの理由はあるかもしれませんが、感じは良くありません。
店の印象を決めるのは、店に入った瞬間です。
「いらっしゃいませ!」と、明るくウェルカムな感じを出せるか、義務的な、いかにも嫌々言っている感じにとられるか。
嫌な印象を与えたら、それをくつがえすのは至難の業です。
また、お店の形態によっても、声のトーンはちがいます。
料理を出す店なら明るい「いらっしゃいませ」を。
お酒を出す店なら、落ち着いた低めの声で「いらっしゃいませ」を。
すでに座っているお客様の邪魔にならないよう、効果的な「いらっしゃいませ」を心がけてください。
席の案内
入ってきたお客様はどこに座って良いか迷います。
ちょっと不安を感じている状態です。
明るい笑顔で「いらっしゃいませ」と言うことは、お客様の不安を打ち消すことになります。
そして一言「こちらのお席にどうぞ」と案内してあげてください。
勝手に座ってしまうお客様もいますが、もしサービスしにくいとか、後から団体が入りそうな場合は誘導してあげると良いでしょう。
その場合は「申し訳ありませんが…」と一言添えてください。
また、荷物のある方には荷物入れの案内はしてあげた方が良いです。
特に冬場や雨天時は、コートや傘など荷物が多くなります。
傘立てはもちろんですが、コートかけもあると良いですね。
お客様が座ったら
お客様が席に座ったら、まずはおしぼり。
メニューが席にないようならメニューも持っていきます。
(食事がメインのり店ならお水かお茶も)
メニューを広げて「こちらが本日のおすすめです」などと声をかけるのも良いでしょう。
ひとりのお店はこれらも省略可能です。
せまい店であれば、カウンターの中から作業をしながら声をかけるのもアリでしょう。
くれぐれも失礼な感じにならないように。
ファーストドリンクは何を置いても最重要
お客様がリピートしてくれるかどうかは、初来店時の「いらっしゃいませ」からドリンクが出るまでにかかっていると言っても過言ではありません。
それくらいファーストドリンクというのは重要です。
ほかの人の料理を作っているなどして手が回らない時でも、できるかぎり新規客のドリンクを優先させてください。
お客様は1日の仕事で疲れているのです。
ビールを一口飲んで、やっと心から一息着けるのです。
その状態でドリンクがなかなか出てこなかったら、かなり嫌な気分になるのが想像できると思います。
ファーストドリンクさえ出してしまえば、その後の料理が遅くてもそれほど気になりません。
(もちろん早いに超したことはありませんが)
たくさんの飲み物の注文をさばくには
突然、大勢のお客様が入ってきて「俺はビール」「私はウーロン茶」などとバラバラに注文されることがありますよね。
そんな時にあせった顔は見せてはいけません。
落ち着いて注文を取り、効率よく作りましょう。
ふたりいたら二人分、十人いたら十人分のドリンクが同時に出せないとダメです。
こんな時は「マップ」を書くと出すのがスムーズに行きます。
マップとは
マップは飲食店用語で、誰に何を出すのかわかりやすくメモしたものです。
お客様に見せるものではないし、自分がわかっていれば良いので、書き方はご自分で工夫してください。
私は方角がわかるようにし、また一番エラい人、つまりゲストや上長などに○をつけていました。
この人から飲み物を出す、ということです。
また特徴がある人ならそれもメモします。「女性」とか「メガネ」など。
画像はわかりやすく書いていますが、ハイボールは「ハイボ」など省略してもOKです。
このマップがあると、わざわざお客様に聞かなくてすみます。
「ハイボールのかたー」などと大声を出して聞かなくても「ハイボールです」と出すことで時間の短縮になり、かつスマートに見えるのです。
また、お客様の会話も邪魔しないで済みます。
ドリンクの効率の良い作り方
お客様は喉が乾いています。
そして早く乾杯がしたいのです。
その時に自分の飲み物が出ていても、全員の分が揃わなくては飲むことはできません。
そして、あなたがたくさんの注文にあせってモタモタしては、せっかくの団体客はリピートしてくれることはないでしょう。
ここはがんばり時です。
注文がバラバラなら、このように準備します。
ウーロンハイ2つ、生ビール3つ、ソルティドック2つなどと注文された場合、
まずは面倒なソルティドックを作ってしまい、ウーロンハイ、生ビールの順に作ります。
生ビールは泡が命です。
ほかの人より先に出されても、乾杯が済むまではお客様は口をつけることができません。
後の人のドリンクが出る頃には、もう泡はしぼんでしまっています。
途中までビールを入れておいて、ソルティドッグ、ウーロンハイを配り、泡だけ足して最後に生ビールを配るということもできます。
それなら泡はへたれず、美味しそうなビールがお客様に提供されます。
上司がビールだった場合は?
先に上司に出して、後の人に高速で出す、が正解です。がんばってください。
また、瓶ビールであれば注いだ方が喜ばれますが、グラスと瓶を置いておけばお客様どうしで注ぎあいます。
そういった手間ははぶいて構わないでしょう。
お客様に上下はあるか
明らかに接待の場である時。
もしくは会社の上司と部下だということがわかる場合。
この場合は接待されている人、もしくは上司から先に出すのがセオリーです。
たとえば、お客様が来店された時、「こちらへどうぞ」などとお客様が言っている場合は、
「どうぞ」と言われている人が上司、または接待される人です。
奥の上座、もしくはソファーなどの広い席や座りやすそうな場所に案内されているのです。
お客様が気を遣っている人に、お店の人間が気を遣うことができれば、接待する側(もしくは部下)は「この店、使えるな」と思うでしょう。
つまり、リピートが見込めるのです。
昨今は飲食店で接待することも少なくなりつつある時代ですが、それでもまったくなくなるわけではありません。
私の店はカジュアルバーでしたが、よく製薬会社や某業界団体の方が大勢で利用されることがありました。
こういったお客様が使ってくれると、売上的にはかなり助かります。
そしてお客様からもキャバクラやクラブではお金がかかりすぎるので、こういったお店は助かる、と言っていただけました。
落ち着いた静かな店で、料理もお酒もおいしく、さらに気配りできるママがいる、ということで良いお客様が定着するのです。
注文が重なったら
もし、注文が重なって、注文の品を出すのが遅れるような場合は、一言お断りすると良いでしょう。
注文された順番は大事ですが、あとから来たお客様のテーブルに何も出ていないでは困ります。
Aのテーブルに三人、その後、Bのテーブルに二人入ったとします。
Aは仕事帰りのサラリーマン、Bは同伴出勤のキャバ嬢とお客様です。
この場合はAに断ってBの料理を先に出す。もしくはBの注文が入った時点で「この料理はお時間がかかります」と一言ことわった方が良いですね。
同伴のお客様の所用時間はせいぜい一時間です。サラリーマン客は仕事後ですから、わりとゆっくりしています。
ただしお腹がすいていて、出した料理が端からなくなっていくようなら、Aの料理を優先したほうが良いかもしれません。
お客様がどのような職業か、どんな理由であなたの店を利用しているのか、プロファイリングすることが重要です。
それに合わせたサービスができるかどうかであなたの店の評価が決まります。
お客様がお帰りになる時は
帰りの車
私の住んでいる土地は、公共交通機関がせいぜい夜10時台に終わってしまうので、お客様はほぼ全員自家用車で来ます。
こういった地方では、お客様はタクシーや運転代行を利用します。
しかし、お客様が帰る時間は重なるので、タクシーや運転代行は必ず混みます。
その土地によりますが、週末になると一時間から一時間半待ちはざらです。
お会計が済んだ後で「タクシー呼んで」と言われても、すぐには来ません。
タクシーや代行に時間がかかりそうな日は、呼んだ方が良いか早めに聞いておきましょう。
でないと会計が済んだお客様がボーっと一時間も座っている、ということになりかねません。
それは、お客様にとってもお店にとっても良いことではありませんよね。
会計
会計はわかりやすく伝票に記入した方が良いですね。
ビールが単価 600円、3つで1800円など。
新しい店はまだ信用というものがありません。
お客様はアルコールが入っているのですから、後で「ボラれた」などと言われることがないようにしましょう。
領収証が必要になる場合もありますので、用意しておいた方がいいですね。
今どきですが、印鑑がないと困るというお客様もいます。
領収証は100均のものでも構いませんが、店の住所と電話番号、印鑑(三文判)を押しておいたものを用意しましょう。
意外と頼まれることが多いので、店名と住所のゴム印を作っておくと手間が省けます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は「女性ひとりのお店にありがちなトラブル」について書きます。
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